木霊

 

だれかが職場から退勤するとき、見送る側も「お疲れさまです」を何となく言うのだが、

今日、お昼の3時ごろに、同じ課の人が突然、だれかが退勤するときのトーンで「お疲れさまです」と言った。

だれも帰っていないのに。

 

たぶん、隣の隣の課が、社内の電話を受けていて、「お疲れさまです」と言ったのを、

だれかが退勤すると勘違いして無意識に木霊したらしい。

 

という話。

 

ブックオフの1番奥の書棚で、大きな声で「いらっしゃいませ〜」と言うと、

店員さんがみんなで「いらっしゃいませ〜」を木霊してくれるから、

自分は1人じゃないって思える、というネタツイを見たことがある。

 

あの無思考型反射はすごいと思う。

教育というものがどれだけ人間の神経に作用できるかを如実に現している。

冷静になって考えると、誰かが言ったことに木霊するべきだと教えられた瞬間がどこかにあるわけで、その記憶と意識がすでに無意識に変わっていて、耳がその音を聞き分けて口が発話までするわけだ。

 

そういえば先週、服を買いに行ったら、

店員さんが甲高い声で「いらっしゃいませこんにちは〜」を繰り返していて、

お母さんに連れられた3,4歳くらいの女の子が、面白がってそれを大声で繰り返していた。

店員さんも、掛け声をやめるわけにもいかず、その数分間はカオスだった。

 

その数分間ではじめて店員さんの掛け声を意識するくらいだから(掛け声がなされていることと、それが女の子にとって面白いと感じるくらいに不自然な発話であることも)、普段は耳に入ってそのまま抜けているということだ。

 

ことばに関する捉え方は人それぞれで、

良し悪しもないけれど、

本当に必要なことばってそんなに多くない気がする。

本当に必要なことばだけを選り抜いたら、どれだけ静かな世界になるんだろう。

 

という話。